フランス ビュール村撮影

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写真左:高レベル放射性廃棄物最終処分場予定地ビュール村風景
写真右:ビュール村の古い農家を改造した反対派の拠点「抵抗の家」

フィンランドオンカロ(前回ブログ)の後、フランスでの高レベル放射性廃棄物最終処分場の予定地ビュール村に撮影に行きました。パリ東駅から列車に乗って約2時間20分。セントディジール駅で降りてレンタカーを借り、そこから小一時間走ると穀倉地帯と酪農地帯が広がるビュール村一帯にたどり着きます。見渡す限りの平原にそこだけ異質なコンクリートの建物がポツン、ポツンと建っています。フランスの放射性廃棄物処分を一手に担当するANDRA(放射性廃棄物管理機関)の地下研究施設とその真ん前に建てられた真新しいホテル(兼レストラン)です。

フランスは世界に名だたる原子力大国。電力の約8割弱が原子力です。使用済み核燃料はラ・アーグ再処理工場で再処理されるので(日本の使用済み燃料もかつてはここに送っていた)、最終処分される高レベル放射性廃棄物は再処理後の廃液をガラスと混ぜて固めたガラス固化体です(日本もこの政策です)。ビュール村には2001年から地下研究施設の建設が始まり、現在地下約500mまで掘られていて、約1億5千年前に形成されたという粘土層での処分研究をしています。

フィンランドオンカロの場合は研究施設がそのまま最終処分場となりましたが、ここは研究施設を処分場とはせずに、近接地域にあらたに最終処分場を建設する予定です。現時点で2017年に建設許可申請提出、2020年着工、2025年から処分開始との予定となっています。

周辺には10の小さな村があり、賛成の村もあれば反対の村もあり、村の中でも意見は分かれています。すでにANDRA関係の仕事に就いている人もいます。反対のCouvertpuis村のセバスチャン・レグランド村長は、一個人としての意見と前置きしながら「一方が他方を責めたり、逆であったり、内紛状態になるようなことは避けたいが、ANDRAが大きな亀裂を生む原因になっている。お互い意見をきかないような状態になってしまっているのは残念」。
賛成のSaudoron村のヘンリ・フランシス前村長は「村民はフランスやスウェーデンの原子力施設に視察旅行に行ったおかげで、原子力に信頼を持てるようになった。雇用も増え、都会から来た人たちとの交流によって文化レベルも上がった。ANDRAが来なかったら私も一生この村のことしか知らなかっただろう」と話していました。

ビュール村には、古い農家を改造した「抵抗の家」があり、フランス全土からこの問題に反対する人がやってきます。環境活動家もいれば、何気なく立ち寄ってこの問題を知り、ここに来るようになった人もいます。大きなキャンプを催したり、人間の鎖でANDRAを取り囲む等、ここを拠点に抵抗活動をしています。日本よりはずっと先を行っているヨーロッパの核のゴミの処分問題ですが、それでもなお人々の根強い反対があることが、この問題の重大さ、深刻さ、危うさ、やっかいさを証明していると思いました。かつ、原子力問題はその国の有り様(民主主義度、情報公開度、責任の所在の明確さなどの文化等)とも深く関係していることをあらためて実感しました。

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