写真左:フィンランド高レベル放射性廃棄物最終処分場施設オンカロ地下約400m地点
写真右:原子力施設に異を唱える地元農家で元議員のユハ・ヤッコラさん
9月上旬、世界初の高レベル放射性廃棄物処分場を建設中のフィンランドへ撮影に行ってきました。オンカロ(洞窟)と名付けられた地下処分場は、マイケル・マドセン監督のドキュメンタリー映画「10万年後の安全」で描かれ、また核のゴミ問題に悩む各国からの訪問が後を絶たない所です。日本でも小泉純一郎元首相がここを訪れ、核のゴミの捨て場所がない原発は動かすべきではない、と脱原発の意思を固めたと自ら語る所です。
フィンランドの人口は約540万人。原発4基が稼働、1基が建設中で、現時点では電力の約20%が原子力。オンカロが建設されている場所は、オルキルオト原発2基がある敷地内です。
ヘルシンキ空港に降り立ってまず認識したのが、ここは岩盤の国ということ。地下にある空港から市街地へ行く電車の乗り場は、岩を掘って建設したようで、通路は岩盤が剥きだした状態で、すでにここから洞窟の気分でした。ヘルシンキ市内には観光地となっている岩をくりぬいた教会もあります。
オンカロの事業者であるposiva社の地質学者は、ここは20億年前の古い岩盤で、地球を形成している大きなプレートのど真ん中にあり、地震はほとんどないという。確かにプレートの端っこで、地震が日常茶飯であり、しかも地下水が豊富な日本とは条件がまったく違うなと思いました。(だからといって地層処分していいというわけではありませんが)世界的に地層処分が妥当といわれる核のゴミの処分方法ですが、強固な岩盤を持つヨーロッパの国々での考え方を日本に当てはめることはできないとあらためて思いました。
フィンランドには日本のような原発への交付金制度はありませんが、原子力施設へは通常の企業より固定資産税の税率を高く設定できる制度があり、地元自治体は財政的なメリットがあります。原発とオンカロが立地するエウラヨキ自治体の首長さんはもろ手を挙げて賛成で、原発3号機の完成が遅れているのが残念だと話していました。首長さんに限らず、原発が稼働して35年でこれまで大きな事故もなく、また日本よりはずっとオープンなので、原子力施設は地元に受け入れられているようでした。
それでも地元農家で32年間町議を務め、うち16年間議長をされていたユハ・ヤーッコラさんは、「長い期間管理が必要な使用済み核燃料は原発の弱いところ。オルキルオト原発は幸い今まで事故はなかったが、使用済みに関しては1千年後どうなるかわからない。世界に450箇所も原発があり、増え続けるゴミをどうするのか、危惧している」と話してくれました。